Trends in Immunologyに掲載された新しい総説の中で、シドニア・ファガラサン教授らは、免疫活性化のプロセスはやや複雑である可能性があると論じている。活性化した免疫細胞から局所環境に分泌される代謝産物が、免疫反応に大きな影響を与える可能性があることを示す証拠が増えつつある。ファガラサンの研究室や他の研究室による最近の研究では、これらの代謝産物の多くが、健康な状態でも病的な状態でも、免疫反応を微調整する細胞プロセスにおいて重要な因子であることが実証されている。
γ-アミノ酪酸、アセチルコリン、GABAなど、分泌される免疫代謝産物の多くは、他の生物学的背景において広く研究されてきた。代謝産物は通常、細胞のエネルギー源であるか、あるいは単に細胞構造の生化学的構成要素である。
図1:マウスとヒトにおいて、分泌型免疫代謝産物(SIMets)を 介した免疫細胞と細胞間の相互作用
図2: 分泌型免疫代謝産物(SIMets)の輸送機構はその生物活性を決定する
最近の研究によると、細胞表面のタンパク質やペプチドを介したシグナル伝達に加え、代謝やエネルギー的なプロセスも免疫システムの日々の働きの根幹を担っていることが示唆されている。病原体やがん細胞に対する免疫反応が、基本的には代謝的・エネルギー的プロセスでもあるということは、驚くにはあたらない。さらに重要なことは、この洞察ががん免疫療法にも重要な意味を持つということである。
しかし、この総説の著者たちが論じているように、分泌される免疫代謝産物の役割はまだ十分に解明されていない。免疫反応における代謝産物の役割と機能をより明確にするためには、かなりの量のさらなる研究が必要である。遺伝子解析やセルソーティングに加えて、メタボロミクスはヒト免疫系における基本的なプロセスを研究するための強力な新しい研究ツールとして急速に台頭しつつある。
書誌情報
Baihao Zhang, Alexis Vogelzang, Sidonia Fagarasan. Secreted immune metabolites that mediate immune cell communication and function, Trends Immunol. 2022 Dec43(12):990-1005. doi: 10.1016/j.it.2022.10.006. Epub 2022 Nov 5.